音楽家の健康法

バンドマンに知って欲しい病気になるプロセス。

日常生活を何気なく過ごしている人と、健康を少しでも意識している人の違いはなんでしょうか?

私が患者さんは見ている中で、健康を少しでも意識している人に共通するのは、「おかしいよ」という身体からの警報のサインをしっかり受け止めている意識があります。

少しでも違和感や不快感を感じる力があり、自分で修正する能力があるのです。

これがないと赤信号なのに渡ってしまい、気がつかないうちに事故(病気)になってしまうんですね。のちほど説明しますが、バンドマンはこの赤信号に気づかない人がとても多く、それには理由がありそうです。

自分がどのような原因で病気になったのかを分かることが大切で、「原因」が知れれば起こってほしくない「結果」を防げます。

病気になるプロセスの説明は西洋医学や東洋医学によって違うと思いますが、今回は操体法での説明で書いていきます。

操体法が何か分かっていなくても大丈夫なので是非とも知って頂ければなと思います。

歪みの発生

操体法では、体は使用(仕様)条件を考えて設定されているため、その条件以外の行動をすると設計された以外の構造体に変化すると考えます。

つまり、体はある一定の使用条件に耐えるように設定されてますが、人間が生きるための法則や生き方の条件以外の違反をして生きていると、構造体として耐えられなくなり変化してしまう、というわけです。

といっても

ギターで例えると、湿度の大きな変化に耐えらず、木材自体の動きと木材の目の向きなどの相互作用で、反りが発生するのと同じ。

ネックが木でできているとしたら、その木が一定の範疇を超えて構造上耐えられなくなった状態ですね。

ギターのネックを無理やり押して音程を上げるネックベントは「やりすぎて設計された通りに弾いてない」みたいなもの、明らかにボディからしたら条件以外の違反。

そりゃ歪んでいくなと痛感しますよね。

このようなことをしなければギターの品質の状態を高く保てるのと同じで、人間が設計されたときのままに、生きる法則や条件通りに生活すれば、健康で生きていけるのです。

では何故人間は歪みが発生してしまうのか、それは「生活習慣の営み(生活習慣)」が原因であり、

  • 息(呼吸)
  • 食(飲食)
  • 動(体の動き)
  • 想(考え方)
  • +環境

が大切となります。

これを同時相関相補連動性と言います。

この4つはすべて自己責任で行われることで、他人に代わってもらうわけにはいきません。

厳しい言い方かもしれませんが、病気の根本的な原因は歪みなので、病気は自己責任の結果であり、自分以外の他人に依存していてはなんの解決にもならないのです。

感覚異常

人間には大切なセンサーである目で物を見る「視覚」、耳で聞く「聴覚」、体で感じる「触覚」、「匂いを嗅ぐ「嗅覚」、口で味わう「味覚」 の系5つの「五感」がある。ここで説明するのは「嗅覚」、「味覚」を表した「身体感覚」と表現させていただきます。

音楽をたくさん聴いているのでバンドマンは聴覚優位になりやすいのですが、身体感覚はみなさん低いように感じます。身体に起こったことに対しては気づかないことがしばしば。

何故この話をしたのかというと。

身体に歪みが出てくると、体は「痛み」や「気分が悪い」などの不快感である「感覚異常」としてあわられます。

「痛み」や「気分が悪い」は悪者扱いされていると思いますが、これらの「感覚異常」は体のどこかに問題があることを知らせてくれるありがたいサインなのです。

楽器で例えると、チューニングが狂って不協和音なのに気づかないで演奏しているのと同じ。

バンドマンは聴覚優位なので楽器の不協和音に気づいてすぐチューニングをしますが、身体の不協和音は身体感覚が低いためほとんど気づかないのです。

たまに身体感覚が高い人を見かけますがほとんどがボーカリストであり、楽器陣は少し低いかなと感じます。

元の歪み(チューニング)を正すと、警報する理由がなくなるため、痛み(不協和音)などのサインは片っ端から消えていきます。

当たり前のことですが、これが難しいんです。

私もギターをやっていて、視覚と聴覚は良いのですが身体感覚はかなり低かったので当時は苦労しました。

何か症状で悩んでいる人は、身体のサインを見逃してないか一度見直すといいでしょう。

機能異常・器質破壊

身体の歪みは筋肉の異常緊張により、関節の動きを悪くしたり、関節だけでなく、体液や血液の流れを妨げ、神経をも圧迫し、内蔵や組織の「機能異常」をもたらします。

肩が上がらないや下痢などが起こるということですね。

やっとここで自分の身体で何が起こっているのかを気付く人がいますが、すでに身体は悲鳴を上げています。

このような状態が続くと。「器質破壊」が起こり、はじめて立派な現代医学的病名が診断されます。

【操体法で考える病気へのプロセス】

生活習慣(息、食、動、想)と環境不適応の問題

身体の歪み

サイン・兆候・痛み(感覚異常)

機能異常

病気(破壊)

まとめると、このような階段になってます。

法則に反した生活習慣のつけは、必ず身体の歪みとなって現れ、そのサインとして、痛み・不快感・こりなどの異常サインを出します。

さらにその歪みを放置していくと、動きが悪くなる、機能低下するなどの機能異常をもたらし、ついには、病気(臓器破壊、変形など)にいたります。

まとめ

いろんな患者さんを見ていくと、健康な人や病気になりにくい人の共通点が見えてきました。

それは原因を自分側に置くことです。

他者や環境のせいにする人は、毎月病院に通い定期的に病気や不調を訴え、最終的に「病気にかかって、人から優しくされた」「いやな仕事をしなくてもよくなった」と思ってしまう二次利得に発展することも。

バンドマンの人は意識高い健康人間までには行かずともと、音楽ライフを少しでも元気にクリエイティブに充実してほしいので、この病気のプロセスを理解して生活してほしいなと思います。

最後に、操体法の創設者の橋本敬三先生はこのように述べています。

人間というのは、元々設計にミスはなく、バランスがとれて、病気などせず健康に一生送れるようになっています。それが大哲学なわけです。

不健康というのはそのバランスがくずれることです。それには何か原因があり、自然の法則やからだのしくみにそぐわないまちがったことをするからです。

「万病を治せる妙療法―操体法 橋本敬三 著」

あなたの心身が健康でいられますように。

参考書  操体法―「ひずみ」を正せば体が治る (らくらくブックス)

RELATED