2018年5月19日に公開した「モリのいる場所」を映画館で観てきましたので感想を書こうと思います。
私は映画を映画館であまり見ない人でしたが、ここ2年間くらいで見る機会が増えてきました。やっぱり劇場で見ると入り込んで観てしまいますし心に残りますね。
吉祥寺の超おしゃれな映画館
観に行った場所は2017年吉祥寺にオープンしたシアター&カフェ『ココロヲ・動かす・映画館 〇 COCOMARU THEATER』。
吉祥寺はたまに行くので存在は知ってましたが、訪れるのははじめて。ひと昔の映画館って感じで上映している映画も物凄いメジャーな作品ではなく少し良い意味でクセのあるのは多い。
渋谷にある映画館、「UPLINK 」が私はとても好きなので、雰囲気や上映している作品が似ているココマルシアター を1日で気に入りました。
内装も待ってる時間がワクワクして楽しくなるような場所になってます。3回にギャラリー展があり何故か巨大な像がいました。
何言ってるか分からないと思うので実際に見に行って下さい(笑)。
物語はこんな感じです。
山崎努と樹木希林という、ともに日本映画界を代表するベテランが初共演を果たし、伝説の画家・熊谷守一夫妻を演じた人間ドラマ。
30年間もの間、ほとんど家の外へ出ることなく庭の生命を見つめ描き続けたという熊谷守一=モリのエピソードをベースに、晩年のある1日を、「モヒカン故郷に帰る」「横道世之介」の沖田修一監督がフィクションとしてユーモラスに描いていく。
昭和49年の東京・池袋。守一が暮らす家の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫が住み着いていた。それら生き物たちは守一の描く絵のモデルであり、じっと庭の生命たちを眺めることが、30年以上にわたる守一の日課であった。
そして妻の秀子との2人で暮らす家には毎日のように来客が訪れる。
「熊谷守一」の生き方に痺れる
上映中に思ったのが「こんな風に生きてみたい」と心の底から思いました。
30年間自宅の庭を探索し、花草や生き物を飽きずに観察。そして職人として時々絵を描く。
緑豊かな庭で風で踊りだす草木の音を五感で感じ、昆虫や鳥と一緒に暮らしているように寝そべったり見つめたりする。時間の流れが遅くなるような体感。
そんな状況を半分憧れもありましたが、やっぱり考え方や生き様がかっこいいんですよ。
服装も顔も生活も仙人みたいな人だけど、中身はそこら辺の人よりも人間味を帯びている。
こういう人って常識がなかったり他人とコミュニケーションする時には愛想がなくてツンツンしている人が多いイメージがありますが、全然そんなことはなく初対面の人にはしっかり自分の名を伝えお辞儀して挨拶をしていましたね。行動は常識外れだけれど(笑)
他人の目は一切気にしない、名誉もいらない。
文化勲章を「これ以上人が来てくれては困る」と辞退するなんてカッコ良い・・・
そして絵は好きなものしか書かない、お金になるならない関係なし。近所の人に描いてと言われて気が向いてたら描く。
ホリエモンやひろゆき、メンタリストのDaiGoやSHOWROOMの前田裕二さんなど「好き」を仕事にして休日と仕事の境目がなく現代で活躍する人達がいますが、昔の明治時代から「好き」を続けて極めた人の成れ果てはこんな感じなのかなと思いました。
「生きることは好きだ(合ってるかな?)」と発言している描写がありました。長く生きていたいと。
あんな仙人みたいな人は長生きは別にそこまでしなくてイイと勝手に想像してましたが、実際は真反対でした。
30年間一度も外出せずに庭のアリの大移動を眺めているような人なので、生き物の弱肉強食の世界を間近で見て、「生」を毎日感じていたから。
明治時代の生まれなので戦争を体験(日露戦争を通ってますが、徴収はされてない)して来たから。
だから「生きたい」という欲が強いのかな。
良い夫婦の関係の一つの答え
作品の中で一つの大きなテーマである「夫婦」。見ててニヤけてしまうくらい素敵な夫婦関係なんです。
ルール無視の囲碁のやり取りは笑いました。
熊谷守一の言葉に「あらそうなのね〜」くらいにテキトーに返してますが、しっかりと熊谷守一の価値基準を理解していて支えているのがわかります。
妻の支えがあるから旦那が自由になれる、共感はしてないけど理解はしている。
様々な普通の人だったらありえない奇怪的な行動や発言も、夫婦として一緒に過ごしてきて熊谷守一の生きる理由の根源が見えてるからこそ許せるし対処もできる。
幼馴染の親しい友人やずっと一緒にいた母親などがちょっとおかしな事をしても、「ああいう人だしね(笑)」と笑って流せるのはその人の行動原理の根源が見えているからだと考えてます。
だから許せるし過去を責めたり本気で怒りもしない。
夫婦でとなるとすごく難しくて「理解できない!!」と怒鳴ったりしてしまう。そうなってしまうのは日々コミュニケーションをしていなかったり、本心を隠して暮らしていると上手くいかないからではないでしょうか。
熊谷夫婦の形は他の人はどうか分かりませんが、老後の理想の関係だなと私は思いました。自由奔放な旦那なので妻はだいぶ苦労しそうですが(笑)
まとめ
映画を観る数週間前に悲しいニュースがありました。
『モリのいる場所』で熊谷守一の妻・秀子を演じた樹木希林さんが永眠されました。樹木さんを偲び沖田修一監督からコメントが届いております。https://t.co/o3GDFnjgyl pic.twitter.com/WOejv5pOWh
— 映画『モリのいる場所』 (@mori_movie) 2018年9月18日
この報道が頭にこびりついてたので、樹木希林さんを他のキャストより特別視して観てまいました。
あまり上手くは言えませんが、妻の秀子役に憑依してるんじゃないかと思ってしまうくらい動作や言葉の間や仕草全てが自然な演技。
そりゃプロだし当たり前かもしれませんが、演技の良し悪しがあまり判断付かない私ですら心の底から凄いなと感じました。
心よりご冥福を祈りいたします。
映画を見終わったあと。
「山あり谷あり、それでも50年」
「いいことばかりじゃない」
「文句はあるけど、いつまでも2人で」
「こんなにも人生は、豊で愛おしい」
予告の言葉が腑に落ちて心地よかった。
是非とも吉祥寺の映画館で。